天皇陛下へ贈る花 ― 敬意と格式をかたちにする一輪
日本において、花は単なる装飾ではなく「想い」や「敬意」を託す文化そのものです。とりわけ天皇陛下へお花をお贈りする場合には、華やかさ以上に“品格”と“節度”が求められます。色合い、花材、サイズ感、そして全体の佇まい。そのすべてが調和して初めて、相応しい贈り物となります。
まず象徴的なお花として挙げられるのが、皇室とゆかりの深い菊です。
菊(キク)

菊は皇室の紋章にも用いられている、日本を象徴する花。とくに白の大輪菊は「高潔」「真実」「敬愛」を意味し、格式高い場にふさわしい花とされています。ただし、弔事を連想させないよう、明るさや瑞々しさを意識したアレンジが重要です。白を基調に、淡い黄色や薄紫を差し色として添えることで、厳かさの中に温かみを加えることができます。
続いて、格式ある贈答花として知られる胡蝶蘭。
胡蝶蘭(コチョウラン)
胡蝶蘭は「幸福が飛んでくる」という花言葉を持ち、格式ある贈り物として広く知られています。純白の大輪は特に気品があり、無駄のない美しさが魅力です。高さや輪数も重要で、派手すぎず、それでいて存在感のあるバランスが求められます。ラッピングは過度な装飾を避け、落ち着いた色合いでまとめるのが基本です。
また、季節感も非常に大切な要素です。春であれば桜やスイートピー、夏は涼やかなトルコキキョウ、秋はリンドウ、冬は椿など、日本の四季を感じさせる花を取り入れることで、より日本らしい心配りが伝わります。ただし、皇室関連の贈答では派手な色や奇抜なデザインは避け、あくまで「端正」であることを意識します。
天皇陛下へお花を贈るという行為は、単なるギフトではありません。それは日本の文化と伝統を尊び、敬意を形にする行為です。だからこそ、花そのものの美しさだけでなく、背景にある意味や歴史、そして贈る側の慎み深さが大切になります。
私たち花屋にとっても、このようなお花をお作りする機会は大きな責任を伴います。一輪一輪を丁寧に選び、余白を活かし、静かな気品を大切に仕上げる。華美ではなく、凛とした佇まい。その中に日本らしい美意識が宿ります。
花は言葉を持ちません。しかし、正しく選ばれた花は、何より雄弁に想いを伝えてくれます。天皇陛下へ贈る花とは、まさにその象徴。敬意、感謝、そして日本人としての誇りを込めた、特別な一束なのです。
